冒険家の親父の手のひらの上で


 親父のヤロー。今度しばいちゃる。

 宝探し、と称して連れてこられたのはミステリー小説の会場にもなりそうな山奥の洋館。この中に宝を隠したから探せ、我が息子よ! という具合。
 二人まで連れてきてもいいと言われて、運の悪い友を二人連れてきた。
 ぎぃ、と扉を開けるとただっ広い部屋の暗闇にたたずむシャンデリアがお出迎え。部屋の隅にはまるまると太った壺が威張っている。
 外観からして広かったのに、ヒントは宝に関することは売れば百万はするとだけ。親父の言葉だから嘘はないだろうけど。
 とりあえず、三人でエイエイオーしてからしらみつぶしに近くの扉に入った。

 2時間後…
 俺たち三人は早くも疲れが現れていた。だって、日当たり悪くて薄暗いわ、扉はガタがきてて開きづらいわ、広いだけでなく蜘蛛の巣あるわ、テンテコマイになっている。
 一人で来なくて良かった。天然のお化け屋敷。
 調べていくと、明治時代に大当たりした貿易商が建てた屋敷らしい。ちらほら書かれている日本語と英語を読むとわかる。家主が居なくなってから何人もの泥棒が入ったのか荒らされ方はすさまじい。
 友の一人恭平が俺にそっくりのオバケを見たと言ったが、なんで俺なんだよ。

 6時間後…
 夜になり、急いでろうそくを探して偶然にもすんなり見つかった。
 俺が馬鹿だった。カップラーメンあっても湯がなければ塩辛いベビースターラーメン。三人でボリボリと食べた。カロリーはあったから元気には…なるわけない。
 見つけた箒で適当に埃を掃いて、そこで寝た。

 翌日の朝。
 友の一人、浩一の額に親父からのメッセージがあった。
『壺は間違っても割るな』
 ……。
 まぁ、体力は回復したけど。気力はどん底だけど。

 6時間後…
 部屋の数が百を超えていることが分かった。馬鹿だろ。

 二度目の夜…
 昨日のカップラーメンは良かった。カップ焼きそばはソースが別の袋になっていた。

 三日目の昼。
 ついに、すべての部屋を調べ終えた。
 部屋の数は地下への階段を見つけてから数えるのをやめた。
 そしてもう一つ分かったこと、この屋敷に壺は玄関のヤツ一つだけだと言うこと。
 浩一の額の文字は消えそうだったから俺が書き直した。
 俺たちは迷いもなく壺を階段から転がすと、派手な音をして割れた。
 するとそこには『水を入れてのぞき込め』と書かれた紙がひらひらと。

 ……さらば、親父の宝よ。

 このクソ親父。本気でしばいちゃる。




あとがき。
ノリだけを追求して、
1000文字に会わせて、
見苦しいくらいネタを詰め込んで、
最終的に満足したので良し。



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