クガハツネ

あとがき

 実は一部だけ実体験。高校時代、毎日一緒に登校する仲の良い女友達がいて、別の女子に告白した事があって、その三日後くらいにその告白した女子と電車に乗り合わせて、二人は元同じクラスだけど、その女友達とばかり話が盛り上がってしまった気まずい体験。それだけを書きたかったこの小説。

 設定は始めっから決まっていて、あぁ上の実体験通りね、その上に独特のストーリーを立てたのだが、全然登場人物が決まらない。そして、ある瞬間に登場人物が決まると驚くほど早く書けた。

 と言うか、執筆時の俺は死人の様だったに違いない。一日原稿20枚の日々。今思うと恐ろしい。授業は半分寝ていた時もあったし、不必要と判断した授業は迷わず欠席して、情報検索室(コンピュータルーム)でひたすら執筆作業を続けていた。

 まぁ、これ原稿用紙にして106枚。規模としては中編。久しぶりに量書いた気がする。また長編に挑戦したいものだ。つーか、ショートショートのネタ切れしてるので……。

 玖珂が酷い難産だった、その分愛着があるのだけど。和坂は俺、そのものだし、竹元はどれだけ『萌え』させるかの度合いを調整してこのように納まる。竹元は『萌え』れば良い、『萌え』れば。和坂は曖昧だけど、みんなそんなもんじゃない?って位置に納まる。和坂は結構感情移入しやすいと思うのだが。やる気無い辺り。問題は玖珂ちゃんだ、玖珂ちゃん。この女の子にどうやって読者を惚れさせるか、ここが課題だった。そのためにならページを惜しみなく割いた。で、結構玖珂がカワイイ&キモイの丁度良い具合に収まったのではと思っているが、どうでしょ。

 結局これは、玖珂と和坂の話であって、それをかき混ぜるのが竹元の仕事。玖珂と竹元が一緒にいるシーンは28節中1節しか無いし、最初から最後まで玖珂と竹元は他人である。この辺りが重要。三角関係における女の戦いではなく、あくまで和坂の話に絞り込みたかった。はっきり言って、竹元は要らないのだが、話をスムーズにそして面白くするにはやっぱり必要なエッセンス。

 一番の難産はやっぱり、玖珂と和坂のトークだ。竹元と和坂のトークは『萌え萌え〜』などと思いながら、自分をセーブしつつ書いたので、凄く楽だった。玖珂と和坂は、どうして和坂は玖珂と一緒にいるのか、が問題だった。玖珂が一方的に和坂を好く理由はどうにでもなったのだけど、玖珂だし、和坂が玖珂を好く理由は結局状況になってしまう。それを自然に思わせるために、やっぱり読者に玖珂を好きになってもらわねばならない。和坂にキスする辺りとか、あっちゃ〜、とか思って欲しいし、玖珂を応援して欲しかった。それがうまくいってると良いな。

 さて、この辺でおしまい。事前に読んで下さった、キッファ氏、Y井氏、そしてわれら文芸部のみなさん、ありがとうございます。そして、ここまで読んで下さった貴方に、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。