*読むときは読みやすい適当な字の大きさ、ウインドウサイズ(幅)に変更してお読みください。
そうしないと冗談なく読みづらいです。
「人殺すんだけどさ、手伝ってくれない?」と唯一無二の親友は言った。


「人殺すんだけどさ、手伝ってくれない?」
 ……はん?
「お前にしか頼めねんだ。頼むよ」
 冗談だろ。
「マジ話」
 ……誰ぇ?
「ヒロミって女なんだけどさ」
 フられたのか。
「違う。そんな理由で殺さねぇ」
 じゃあ、そいつお前の何なんだよ。
「つき合っ」
 お前、何で
「ヒロミが死にたい、って言ってんだよ。んでな、俺は止めたし、何でだって聞いたんだ」
 それで。
「どうせ俺には分からないって」
 お前はどうしたいんだ。
「……殺してあげたい。俺殺してあげてんだ!」
 っ。早まるな。まぁ、落ち着け。
「揃えたんだ。縄とか薬とか!」
 落ち着けっ! いいか、絶対に殺すなよ。
「ヒロミが死にたいって言って」
 落ち着け。じゃあ、まず、お前はヒロミを殺したいのか?
「ヒロミが言うなら」
 お前だよ。お前はどう思って。
「ヒロミは俺よりずっと頭良いんだ。いい大学出てる。あいつがいいって言ったらそれがいいに決まってんだ」
 俺が聞いてるのは、お前がな、ヒロミ、さんが亡くなったら嫌じゃないのか。
「嫌だ」
 だろ。殺すこたぁねぇよ。
「死にたいってヒロミが」
 じゃあ、止めろよ。
「無理。俺ヒロミより頭悪ぃから」
 関係ねぇだろ。お前、そこまでその女信じれんのか?
「ヒロミは絶対だ。嘘は言わねぇ」
 お前はそれで納得できんのか?
「できるわきゃねぇだろ。でもヒロミが死にたいって言ってんだよ」
 ……あんさ。ヒロミってやつ、本当にお前のこと好きなのか?
「決まってんだろ。だから俺に殺してくれって頼んでんじゃん」
 ……わかった。お前怖いんだな。
「怖かねぇ」
 ウッソ。じゃお前一人で殺しゃいいじゃん。怖いから俺んとこ電話してきたんだろ。
「違う。お前俺より頭いいだろ、ならヒロミのこと分かんかと」
 俺だって分かるわけねぇだろ。そんな女ほっとけ。女失って、ムショ入って、馬鹿だろ。
「願い、叶えたい」
 じゃあ、一人で死にゃいいじゃん。
「俺に殺してくれって言ったんだ」
 わかった。そいつ病気持ちなんだろ。どうせ死ぬならお前に殺してほしいって。
「そんなんじゃない。それならヒロミは俺に言うだろ」
 そいつはお前を悲しませたくない。だからそんなこと言うんだよ。そのくせ、自分は幸せになりたがる。それが、一番好き、な、お前に殺されたい。お前の話聞いてても、そうとしか思え
「……ヒロミはそんなんじゃねぇ。お前に頼んだ俺が馬鹿だった!」

 唯一無二の親友が幸せになれればいい、かと、思った。




あとがき。

高校卒業後、最初の作品。
とりあえず、印象的なタイトルを探しているうちに、ふと思いついたのがこのタイトル。長い。
これを見せられたらびっくりするよなぁ、俺だったら惹かれいまう、まずタイトルから入ったのではある。
そして次は、会話のみで成り立つ小説、あくまで戯曲でなく小説というのをやってみたかった。
その両方がかなえられたので、俺としては文句はない。
小説としての面で言えば、満足のいく作品に仕上がった。
というか、初めのうちはタイトルだけ決まったのだが、何故人を殺すのを手伝うのだ?と言う話になった。
人を殺すのに理由はない、それは殺人鬼だ。という小説ばかり読んでいたので、それからは脱却したかった。
あくまで現実的な人間を描く。人間の馬鹿さ加減。これでいいだろ!!
説明しない、雰囲気で読み取れ!! これぞ小説だ、ハラヒレヒィ!!(奈須きのこ拒食症)
にしても、会話というのは難しい。演劇出の俺にとってこれは最大のテーマであり、利点でもある。
演劇で養った会話センス。これを生かさないわけにはいかない。
何度口に出して読んだ事か、口にしなければそれが本物の台詞かどうか判らない。(信念)
かつ、口語を文章化してその口語のエッセンスを紙面上で伝えられるか、それも課題だ。
はっきりいって、満足いった出来にはなったが、かなり大変だった。
もうこんなことしたくない。けど、俺はこっちの方が才があるかも……。

そういえば、このお話の続きを問われた事がありまして、
というか、読者には「これから殺しちゃうんだなぁ」というのが漂ってしまったようです。
しかも、主人公も放任主義っぽいし。
いや、殺しません! つか、俺の小説の上で殺人なんか起こさせません!(信念2)
ちょっとくらい解説した方が良いのかな?
まず、放任主義じゃないっすよ。主人公は親友を信用している、どんなに馬鹿でも、そんな事はしないと判っている。
だから、あくまで主人公はその問題を共有する、という会話をした。本気でない、馬鹿話の延長線のような。
主人公の回答は適当、なんですよ(笑) ただ、ちょっち頭良いというか、学者気質なだけです。(俺じゃん)
一方、親友は電話を切ったとたん、急に冷静になってしまう。なぜなら、親友の取る行動はもう、とうに決まっていた。
だって、一番好きな人が居なくなる悲しみは当人が一番判っている。
ただ、彼は本当に、その話を自分だけ所有した状態で居るのがつらかった。
だから、親友である主人公に”手伝ってくれない”と、親友は言ったわけです。あくまで手伝う→問題の共有。
(ちょっと無理があるなぁ。だって、タイトル的に、「殺すんだぜ」より「殺すの手伝って」の方が面白そうじゃん)
その後、親友とヒロミさんは仲直りします。たぶん、仲直りします。
ヒロミさんが何故死にたかったのか、この馬鹿な親友がどうやってヒロミさんを説得したかはご想像にお任せします。

それにしても、男って馬鹿ですよね。(信念3)
女も馬鹿ですけど(敵に回してる?!)
今回書きたかったテーマの一つがこれ。
盲目的に人を信じてしまう、いや、男に限らないけどさ、
なんだろ、その不条理な部分を書き出したかったんだと思う、俺は。
結局親友はわかってないんだし、でも、相手がそういうから?
なんだか、説明するのも馬鹿らしい。止め止め。というか、自分の考えがまとまってない。
とにかく、男は馬鹿な生き物なんだよ。世の女性諸君、男からもっとむしり取りなさい。



BACK